トムラウシ

高校から大学にかけてずっと登山をやってきたので、遭難のニュースには心が痛む。自分も一歩間違えば命を落としたシーンは何度もあったし。

それにしても、北海道とはいえ、夏のトムラウシ山で10名もの凍死者を出すなんて尋常ではない。トムラウシ山は、たぶん3回くらい登っていて、今回のツアー客とまったく同じコースを一人で縦走したこともあった。晴れていれば、なんてことのない、気持ちのよい縦走路。道も整備されているし。ただ、本州のメジャーな山域と違って、有人の小屋はない。悪天候でも逃げ込むところが少ないのだ。

亡くなった方たちは、ほとんど60代だそうだ。べつに60代でもそれなりの経験と体力があれば、無理な行程ではないのだけど、状況が悪くなったときの体力のマージンが少ないのだから、ガイドは考慮しないと。報道しか情報はないけれど、2泊3日の行程はよいとして、予備日を取らなかったことが最大の原因だろう。予備日がないと余裕がないから、悪天候でも無理をする。ちょっとした無理が悪い方向に重なるというのが典型的な遭難のパタンなのだ。

凍死というと、「八甲田山死の彷徨」みたいな雪山を想像するかもしれないけど、全身濡れて、風がビュービュー吹けばそれだけで体温を奪われる。疲れていればなおさら。ガイドがそれを知らなかったとはありえない。逆に言うと、防寒具と言っても、乾いた下着、中間着、フリース、ゴアとかのまともな雨具を重ね着して、風雨が強まれば、ツエルトでもかぶっていれば、夏山で凍死なんてありえないし、そういう装備すらなかったのなら信じ難い。いまどきの山の衣類はとても性能がよくて、チクチクして不快なウールの下着、すぐ濡れてむれむれになってしまう雨合羽、なんて着なくてもいいのに。そういえば、僕の学生のころはフリースなんて便利なものはなかったな。

ガイドツアーでは、ガイドの指示は絶対である。ツアー会社の責任はどう言い繕っても逃れられないだろう。亡くなられた方々のご冥福をお祈りしたい。

九州に行ったら、また山登りをしようと思っているだけど、こういうニュースを聞くと「中高年の登山ブーム」の一角だけは担いたくないともおもってしまうのだ。